私は仕事柄患者さんから「整形外科に行っても薬出すだけで何もしてくれないから行く意味がない」という話をよく聞きます。

確かに整形外科ではレントゲンを撮って痛み止めや湿布を出して数日様子見をするということは多いのではないかと思います。

実際に私が過去に整形外科を受診した際もそうでしたし、こういった対応に不満をもつ方がいることも理解できます。

しかし、この対応で医師は「何もしていない」のでしょうか。

医師が薬を出すまでには、問診をもとにレントゲン検査をして『レントゲンに写る異常があるのかないのか』を確認し、それらをもとに医学的に痛み止めや湿布などの薬物療法で症状の改善が可能だと判断したからこそ薬が処方されているのだと思います。

つまり薬を出すまでに『問診・検査・診察』をしているわけです。

そのため「整形外科は薬を出すだけで何もしてくれない」というのは事実と異なるのですが、ただ患者サイドが「薬を出すだけで何もしてくれない」と感じるのは問診等の必要性を理解していないからというわけではないと私は考えています。

私が患者さんからよく聞く整形外科に対する不満は他にもあり、「待ち時間が長い」「話を聞いてくれない」「顔を見てくれない」というものは本当によく聞きます。

これらは整形外科全体というより医師個人の対応への不満といった感じですが、「整形外科は薬を出すだけで何もしてくれない」という不満にはこれらの医師の対応への不満が大きく関係しているのだと私は考えています。

要は『コミュニケーションの問題』です。

もちろん医師側・患者側でそれぞれ言い分があると思います。

「待ち時間が長い」に関して医師が「待たせようと思っているわけではないけど、診察が1・2分で終わるわけはないからある程度待ち時間があるのはどうしようもない」と言っているのは目にしたことがありますし、患者が「患者がいっぱい来て忙しいのはわかるけど、診察券出してから（予約時間から）2・3時間もかかるのはどうにかしてほしい」というのも聞いています。

待ち時間を完全に無くそうとするなら完全予約制にして時間で区切るしかないと思いますが、ただ完全予約制にするとその病院に1日にかかれる患者の人数は圧倒的に減ることが予想されます。

こうすると美容医療のように基本的に保険外で成り立っている場合ならまだしも、整形外科のように基本的に保険で成り立っている場合は経営自体が困難になるかもしれません。

「話を聞いてくれない」も医師は「診断するために必要なことは十分に聞いている」のだと思いますし、患者は「症状に付随するエピソードまで聞いてほしい」のだと思います。

ただ、症状に付随するエピソードを全員満足するまで聞いていたら診察時間がかなり長くなるので結果的に待ち時間が今以上に長くなるでしょうし、今以上に待ち時間を長くしないためには「診断するために必要なことだけを聞く」に留めておく必要があるのでしょう。

「顔を見てくれない」に関しては全面的に医師が悪いと思います。

人と話すときには目を見るということを教わらなかったのでしょうか。

おそらく診察の時に患者の顔を見ない医師はごく少数だと信じていますし、そんな医師を信用している患者も少数でしょう。

こういった不満が積もり積もった上で、いつ行っても同じ流れで同じ薬しか出されないという経験をした患者が「整形外科は薬出すだけで何もしてくれない」ということを考えるようになるのではないでしょうか。

実際に私が知る範囲では、待ち時間がさほど長くなく患者と丁寧にコミュニケーションをとると評判の整形外科に対して「何もしてくれない」という不満を聞くことは聞いたことはありませんし、待ち時間が長くコミュニケーションがとれないと評判の整形外科に対して「何もしてくれない」という不満は山ほど聞きます。

あくまでも私が知る範囲なので全国的にどうなのかは分かりませんが、私が知る狭い範囲では顕著に差が出ています。

そのため「整形外科は薬出すだけでなのもしてくれない」と患者が感じるのは医師と患者のコミュニケーションに問題があると考えています。

ただこれは医師にのみ問題があるわけではなく、患者サイドに問題がある場合もあります。

お互いにそれぞれ問題があるのでお互いに歩み寄る姿勢が必要だと思いますが、現実問題難しいのでしょうね。

少なくとも整形外科が現状のままであれば、どれだけ医師が「自分たちはこれだけのことをやっている」と訴えたところで評価が変わることはないでしょう。